イチジク

イチジク(Ficus carica)はクワ科に属する果樹で、花や果実の付き方で大きく4系統に分類されます。日本で栽培されている品種は、花粉が受粉しなくても果実が発育する普通系に属し、夏と秋に年2回収穫できる品種が中心です。イチジクは生食する以外には、貯蔵性が良くないことからドライフルーツとしての利用も多く、菓子の材料やワインのおつまみとして食されます。いちじくは漢字で「無花果」と書きますが、花がないわけではありません。いちじくは実の中に小さな花をつけるため、外からは確認できないのです。果実を半分に切ると赤いつぶつぶがたくさんつまっていますよね。あれが花です。いちじくは花の部分によって独特の食感を生み出していたのです。「いちじく」という名前の由来は、毎日1つずつ熟すことから「一熟」→「いちじく」になったという説や、ひと月で実が熟すため「一熟」→「いちじく」という説もあります。また呼び名としては南蛮柿(なんばんがき)、唐柿(とうがき)ということもあります。古代エジプトの壁画にもブドウとともに描かれており、さらには旧約聖書にも数多く登場する歴史ある果物です。あのアダムとイブが裸を隠すのに使ったのもいちじくの葉です。 アラビア半島で誕生したいちじくは、その後ヨーロッパからペルシャ、中国へと伝わり、日本へは江戸時代に中国から長崎に運ばれました。当初は薬用として栽培されていましたが、生産量が増えるにつれ食用として親しまれるようになりました。

●科名:クワ科
●原産地:アラビア半島
●主な産地:ヨーロッパからペルシャ、中国へと伝わり日本へは江戸時代に中国から長崎

●成分 カリウム、ペクチンをはじめとした食物繊維、アントシアニン、カロテノイド、リコペン、テイン、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン

●作用・効能
効能:高血圧予防、動脈硬化予防、脳梗塞予防、心筋梗塞予防、便秘改善
イチジクは多くカリウムを含んでいます。カリウムは血圧を下げる効果があるので、高血圧や動脈硬化などの防止に役立つでしょう。ペクチンをはじめとした食物繊維も多く含まれているので便秘改善にも期待できます。

イチジクは果皮色が黄緑色、黄色、褐色、赤色、紫色、黒色と品種により様々で、果肉色も黄色いもの、赤色の薄いものから濃いものまで様々です。イチジクの果皮や果肉の色はアントシアニンの含量に影響されます。アントシアニンの主たる成分はシアニジンの配糖体であるシアニジン-3-O-ルチノシド(シアニジン-3-O-ラムノグルコシド)です。アントシアニンの含量が高いほど抗酸化活性が高い傾向があります 1。

イチジクにはカロテノイドも含まれています。最も多いのがリコペンで、これ以外にルテイン、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチンが存在します。含量は緑黄色野菜やカンキツ類のように高濃度ではありませんが、イチジクは血液中に見出される主要なカロテノイドの全てを含むのが特徴的です 。

イチジクの水抽出物と熱水可溶性多糖に抗酸化活性があり、活性は熱水可溶性多糖の方が高いことが報告されています。さらに、マウスに熱水可溶性多糖を体重1kgあたり500mg投与したところ、作用機作は未解明ですが、免疫作用の指標となる血清中ヘモリシン濃度の上昇を確認し、イチジク由来の多糖類が免疫機能に影響を与える。
イチジクにはフィシンというタンパク質分解酵素が含まれています。食後のデザートとして食べれば消化を促進してくれるでしょう。切断部から出てくる白い液体にもタンパク質分解酵素は含まれていて、イボ取りなどの民間療法に使われています。

●イチジクの見分け方
ふっくらと大きくて果皮に張りと弾力があり、香りのよいものを選びましょう。へたの切り口に白い液がついているものは新鮮な証拠。お尻の部分が裂けそうになり、ヘタのところまで赤褐色に染まると食べ頃です。果皮に傷があるものやしなびているもの、お尻の部分が割れすぎているものは避けたほうがよいでしょう。なお、未熟ないちじくは胃を痛めることがあるので要注意。

●イチジクの保存方法
乾燥を防ぐためにビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。日持ちしないので、早めに食べきりましょう。食べきれない場合は、シロップで煮てコンポートにしたり、ジャムにするという手もあります。いちじくの皮は、バナナのように軸の部分からむくと食べやすいでしょう。ジャム用など果実がかための場合は包丁でむいたり、熱湯にさっとくぐらせてから冷水につけるとむきやすくなります。

●参考文献
・ハーブ検定テキスト
・家庭の中医学
・緑の薬局
・健康茶情報
・ハーブテイー薬草データベース
・薬膳情報net
・ハーブの香り
・サプリメントラボ